どうなる生前贈与?相続時精算課税制度が改正される?「渡邊先生のちょっとイイ話」

掲載日:2023年01月19日 カテゴリー:資産相続
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大家さん専門税理士の渡邊です。
政府が2023年度の税制改正で生前贈与の制度を見直すことを検討しているというニュースがありました。
その中で、相続時精算課税制度の使い勝手を良くするという内容がありました。

相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税制度とは60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ、2,500万円までは贈与税がかからずに、贈与ができる制度です。
贈与する財産の種類、回数には制限がありません。金額についても制限はありませんが、2,500万円を超える部分は、一律20%の贈与税がかかります。

しかし、将来、贈与した親が亡くなった時には、その贈与した財産は全て、その親の相続財産に含めて相続税が計算されます(払った贈与税は相続税から差し引かれます)。
贈与税がかからなくても相続税がかかる可能性があるのです。税金を免除するものではなく、相続財産を前渡しする制度です。ですから原則として相続税の節税にはなりません。

また、相続時精算課税制度は一度選択すると、撤回することは出来ません。
そのため、その親からの贈与については、今後、毎年の110万円の基礎控除は使えなくなってしまいます。
したがって、毎年110万円以下の贈与をして、将来の相続税の節税をしたい方にとっては、適用すると不利になってしまいます。

さらに、相続税に加算される価額は、贈与時時点の価額になります。建物など、将来的に価値が下がっていくものを贈与すると、贈与時点の価格で相続税がかかることになり、不利になってしまいます。

改正後に有利になるケース

この制度で有利になる場合は、下記の通りです。

①相続税がかからない場合

相続税がかからなければ、早目に資産を移転することに使える。

②将来値上がりが確実な財産

将来近くに駅が出来るなどで土地が値上がりしそうな物件など、贈与時の価額で相続税課税されるため、相続税が抑えられることになります。

③収益物件

アパートなどを贈与すれば子や孫に収益を貯めることができ、そこには相続税がかかってこないことになります。

④遺留分を放棄させる場合

遺留分の放棄をさせるためには、ある程度の生前贈与が必要なため。

⑤贈与時の評価額で固定したい場合

現金を収益性が高いものに変えて運用していくなど、今後用途などを変更して評価が変わる可能性があるような場合。

どのように改正されるかわかりませんが、制度の仕組みが変わらなければ、有利になる場合にのみ使うことに変わりがないかと思います。
改正内容に注目しておきましょう。
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渡邊 浩滋 氏

大家さん専門税理士・司法書士 渡邊浩滋総合事務所 代表
大家さん専門税理士ネットワーク 「Knees bee(ニーズビー)」代表
大学在学中に司法書士試験に合格。大学卒業後総合商社に入社。法務部として契約管理、担保管理、債権回収などを担当。退職後、税理士試験に合格。資産税専門の税理士法人に勤務後、2011年12月独立開業。
実家のアパート経営(アパート5棟、全86室)が危機的状況であることが発覚し、立て直すために自ら経営を引き継ぎ、黒字化を成功させる。2018年大家さん専門税理士ネットワーク「Knees bee(ニーズビー)」を設立。賃貸住宅フェアなど講演も多数経験。
著書に『大家さん税理士による 大家さんのための節税の教科書』(ぱる出版) 『税理士大家さん流 キャッシュが激増する無敵の経営』(ぱる出版)他多数。

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