プロが教える!意外と知らない!?養子縁組制度と相続 「司法書士・進藤 亜由子先生のトラブル回避ガイド」

掲載日:2022年11月11日 カテゴリー:資産相続
令和4年8月、養子の男が養親である資産家を財産目当てで殺害した疑いで逮捕されるという事件が起きました。
小説やテレビドラマではよくある話ですが、現実の世界でこういった事件が起こるとやはりそれなりの衝撃を受けます。こんな事件が起こってしまいましたが「養子縁組」は相続を考える際に非常に重要な問題です。
今回はこの養子縁組制度と相続について、その具体的な事例を紹介します。

養子縁組とは

養子縁組とは
養子縁組とは、血縁関係のない者同士を、法律の制度によって親子関係を発生させることをいいます。

親子関係になるとどうなるのか?というと、一番わかりやすいのが「相続人になる」ということです。
資産家や経営者が「跡取がいないから養子をとる」って割と想像しやすい養子縁組だと思います。
また養子縁組をすると、相続人になるだけでなく扶養義務なども生じます。

この養子縁組ですが、実は2種類あります。
「普通養子縁組」と「特別養子縁組」です。

先程の例で「跡取りがいないから養子をとる」というのは「普通養子縁組」を指し、一般的に養子縁組と聞いて想像するのは普通養子縁組のことになります。
では、この2種類の養子縁組はどんな違いがあるのでしょうか。

普通養子縁組 と 特別養子縁組

普通養子縁組 と 特別養子縁組
同じ養子縁組でも、普通養子縁組と特別養子縁組は、そもそもの制度趣旨から違います。

⑴.普通養子縁組 … 相続人の確保など家の存続のための精度
⑵.特別養子縁組 … 家庭環境に恵まれない子のために家庭的な養育環境の提供や、子の利益を図るための制度

普通養子縁組が家の存続を制度趣旨としている一方で、特別養子縁組は子の利益を図ることを制度趣旨としており、同じ養子縁組と言っても全く違うもののように感じます。そのため、要件や裁判所の関わり方も異なります。

⑴.普通養子縁組⑵.特別養子縁組
制度趣旨相続人の確保など家の存続のための制度家庭環境に恵まれない子のために家庭的な養育環境の提供や、子の利益を図るための制度
養親側の要件20歳に達した者、独身でも可夫婦ともに20歳以上で、夫婦のどちらか一方が25歳以上・配偶者がある者のみ可
養子側の要件年齢制限なし原則申立時に15歳未満であること。
縁組するための要件特になし父母による養育が困難で子供の監護が不適当
縁組するための手続き当事者の合意により成立養親の請求により6ヶ月以上の監護期間を経て家庭裁判所の審判が必要
縁組後の実母との関係存続する終了する
戸籍への記載養親との続柄は「養子・養女」となる養親との続柄は「長男・長女」などと記載される(実子と同じ)
離縁について当事者の合意によりいつでも離縁可原則、離縁することはできない。※虐待など養子の利益のために必要があると認める場合のみ家庭裁判所の審判により離縁可

養子縁組している状態で相続が発生するとどうなる?

冒頭に記載しましたが、養子縁組とは「親子関係を生じさせる」制度なので、養子縁組している状態で養親が亡くなると、養子はその相続人として養親の財産などを相続することができます。

ところで、少しだけ事件に話を戻すと、
容疑者は、扶養義務を免れるために女性の死後、養子縁組を解消する「死後離縁」の申し立てをしていた、という情報もありました。先にも述べましたが、養子縁組をすると、相続人になるだけでなく、扶養義務も生じます。扶養義務とは法律上、一定範囲内の親族が相互に負っている生活保障の義務を言います。被害者には、高齢の母親がいたので、その母親への扶養義務を免れるための行為だったのでは?と考えられているそうです。

実父母との親子関係はどうなる?
普通養子縁組では実父母との親子関係も継続されるので、実父母の相続人にもなるし、養親の相続人にもなります。しかし、養子縁組の場合、一般的な相続と異なる点もあるので相続人の特定には注意が必要です。

里親制度との違い

里親制度は養子縁組と違い、里親との法律上の親子関係は生じません。この点が一番大きな違いです。
そして、子の年齢は原則として18歳までと言う点でも異なります。

繰り返しになりますが、養子縁組をした者との間では法律上の親子関係があるので、養親が亡くなった際には、その子として相続権をもちます。養親に実子がいた場合、その子との相続分は平等です。
つまり、親が養子縁組をして子が増えたことで、実子の相続分や遺留分は減ることになり、実子と養子との関係性が険悪になり遺産分割協議がうまく進まない、ということはよくあるトラブルの一つです。

実際に起きた養子縁組に関する相続問題を紹介します。

養子縁組に関する相続問題事例 CASE1

養子縁組に関する相続問題事例 CASE1
「稼業を継いだ長女の夫と養子縁組したが、長女夫妻が離婚した。長女の元夫に離縁を申し出たが、応じない。」

この場合、長女の元夫に相続権が残ってしまいます。任意に離縁に応じない場合、家庭裁判所に離縁調停の申し立てを行うことになります。調停は話し合いの場なので、最終的には双方の合意が必要です。
調停でも解決しない場合は裁判となりますが、離縁が認められるには法律上の上記条件があり、簡単には認められません。

養子縁組に関する相続問題事例 CASE2

養子縁組に関する相続問題事例 CASE2
「子の自分が当然に相続すると思っていたが、母とは血の繋がりがなく、養子縁組をしていなかった。父がなくなった際に母が財産を相続したので、このままでは両親が残した財産が母の兄妹に渡ってしまう。」

扶養意識の問題で、妻側の連れ子の多くは、父親となる者との間で養子縁組をしていても、夫側の連れ子は、母親のなる者との間で養子縁組をしていないケースが多くあります。亡くなって初めて養子縁組がされていなかったことを知ったというケースもありますが、その場合は相続権がないので非常に重要な問題です。
「遺言書」を作って養子に遺贈する、という方法もありますが、税務上は相続の方が圧倒的に有利です。養子側が気付いたとしても、年老いた養親に今更縁組の話を持ち掛けづらい、という声も聞きます。
気持ちは十分理解できますが、病気や認知症を発症して意思能力を失うと、養子縁組ができなくなりますので早めの対策をお勧めします。
今回は、相続財産目当てに養子縁組、そして養親を殺害という悲しい事件が起きましたが、本来の「養子縁組」制度は、血縁関係がないものとの間で親子関係を生じさせることが可能な唯一無二のとても素晴らしい制度だと思います。
ただし、養子縁組は法律で細かいことが決められている複雑な制度であり、相続時トラブルも多く発生しています。安易な養子縁組は、後に大きな問題に発展することも少なくないので、慎重に行うようにしましょう。

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進藤 亜由子 氏

ふくおか司法書士法人 共同代表
1985年、福岡市西区出身。早稲田大学在学中の平成19年度最年少での司法書士試験合格から現在に至るまで司法書士業界一筋。
大手ディベロッパー会社の登記を一手に請け負う東京の司法書士事務所で不動産登記の経験を積み、地元の福岡に戻り、債務整理手続きに特化した司法書士法人で債務整理の経験を積んだ後、独立し伊都司法書士事務所を開設。開業当初より地銀や大手ハウスメーカーからの指定を受け多くの登記手続きを受任。更に債務整理事務所勤務の経験も活かし借金に悩む多くの方の借金問題を解決へと導く。
その後、ふくおか司法書士法人を立ち上げる。他の事務所で断られた複雑な案件を解決し続け、その実績をコラムで紹介。記事を見て全国から相談者が集まる。現在は、相続・遺言手続きセンター福岡支部を運営。事務所内に相続に特化した専門チームを作り、相続に強い司法書士として日々多くの相談に応じている。

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