「土地や不動産」を相続したらどうすれば良い?他人事じゃない!相続問題で備えるポイントは?

掲載日:2023年06月07日 カテゴリー:資産相続

相続人に未成年者がいる場合の不動産の相続はどうする??その方法とポイント

相続人に未成年者がいる場合の不動産の相続はどうする??その方法とポイント
未成年者は原則として単独で法律行為を行うことができません。
スマホもクレジットカードの契約もダメ。スマホが欲しいから親に内緒で携帯ショップに行っても、もちろんスマホは買えません。未成年者がゲーム機をもらう代わりに店番(みせばん)をする(負担付き贈与)とかも本当はダメです。
そんな未成年者でも単独でできる行為の代表例が「お小遣いを自由に使う」でしょうか。他にもいくつかあるのですが、要は「絶対に損しない」という行為であれば未成年者も単独でできることとされています。
未成年者は判断能力が育っていないから「法律で守りましょう」という健全な決まりです。
例えば、借金免除してもらうとか、負担なし贈与(無条件でゲーム機をもらう)とかだったらOKとされています。

では未成年者が「単独でしたらダメですよ!」と決められている法律行為をしたい場合にどうするのか?
そこで親権者の登場です!
親権者が代わりにその行為をしたり、同意をすることによって様々な契約ができるのです。

今回はこの "未成年者" が相続人にいて「遺産分割協議」をする際のお話。
もちろん未成年者は単独で「遺産分割協議」をすることはできません。「遺産分割協議」は財産に関する話合いであり立派な法律行為なので誰かが代わりにする必要があります。
しかし、殆どのケースで親権者がこの代わりを務めることができませんので特別な方法が必要なのです!
でもなぜ親権者は未成年者の代わりに「遺産分割協議」ができないのでしょうか。

親権者が「遺産分割協議」を代わりにできない理由

それは「利益相反」という行為に当たるからです!
利益相反をかみ砕いて説明すると「あちらを立てればこちらが立たず」です。どちらか一方が得をすると、もう一方が損をしてしまう状況のことです。
しかし遺産分割協議において、親権者と子が「あちらを立てればこちらが立たず」になってしまうというのは一体どういうことでしょうか。

「遺産分割協議」と 親権者 と 子

「遺産分割協議」とはその名の通り、
誰かの「遺産」を相続人で「分け合う(分割)」ための「話し合い(協議)」です。

例えば父・母・子の3人家族がいたとします。
父が亡くなり、遺産は自宅の土地建物のみだとします。令和6年4月1日より相続登記も義務化しますので、父名義のまま放っておくわけにはいきません。そこで、自宅を母名義とする遺産分割協議をします。子は遺産分割協議ができないので母親が代理人になって協議すると、父の遺産を「母と母(子の代理人)で話し合って分け合う」というよく分からない状況になります。

この状況で未成年者が "絶対損しない" と言い切れるでしょうか?
法律は、この状況で未成年者が "絶対に損しないとは言い切れない" と判断します。なので、親権者は未成年者の代理人として遺産分割協議ができないのです。
因みに、これはあくまで「親権者と子が利益相反の関係になってしまう場合に代理人になれませんよ。」という話なので、例えば子だけが相続人で祖父の遺産について父の兄弟と遺産分割協議をする場合などであれば母親が代理人として遺産分割協議ができます。

しかし、子が複数いて、その子達全員の代理人になれるかというとそれはできません。子同士で利害が対立するので母はそのうち一人の代理人ににはなれますが、他の子の代理人にはなれません。
では、親権者が代理人になれない場合、遺産分割協議は誰がするのでしょうか。

誰が未成年者の代わりに遺産分割協議をするの?

じゃあ誰が代わりにやってくれるの?というと、ここで「特別代理人」の登場です。

特別代理人とはその名のとおり特別な代理人のことです。
これは未成年者の遺産分割協議のときだけ登場するわけではなく、例えば、訴訟したいけど相手の方の法人が閉鎖(清算結了)してしまっている、などの場合もこの特別代理人が登場します。
特別代理人は勝手に選ぶことはできず、裁判所に申立をして裁判所が選任します。遺産分割協議を行う特別代理人を決める時は家庭に関することなので、家庭裁判所に選任してもらいます。
つぎに、特別代理人の選任の流れなどについてご紹介します。

特別代理人を選任したいけどどうしたらいいの?

特別代理人の選任申立は、誰でもどこでも申立できるわけではありません。
◇申立人:親権者又は利害関係人
◇管轄裁判所:未成年者の住所地の家庭裁判所へ

そして肝心の特別代理人って誰がなるの??ですが、候補者を立てることができます。
資格制限はないので、未成年者と利益相反の関係になる人でなければ誰でも候補者に名乗り出ることができます。身内の方が候補者となる場合が多く、母と子の協議の場合には子の祖父母や叔父叔母が選ばれることが多いです。
身内にお願いできる人がいなければ、申立を依頼している司法書士が候補者になることもあります。

そしていざ申し立てるときの費用や選任までの期間の目安は以下のとおりです。
◇費用:印紙代800円と切手代1000円くらい(申立をする裁判所によって異なります)
◇期間:申立から選任されるまで一般的に約1か月程度

特別代理人選任申立書時に遺産分割協議書案をつけて申立をします。
裁判所がこの遺産分割協議案のどこを気にしているかというと「未成年者の利益は守られているか?」ということです。「未成年者の利益は守られているか?」というのが具体的にどういったことかというと、「法定相続分を下回ってないか?」ということです。

先ほどの例で考えると、父名義の不動産を母名義にする、というだけの遺産分割協議案であれば通りません。未成年者の法定相続分を下回っているからです。この場合には、父名義の不動産を母名義にする代償として子に対し不動価格の2分の1を支払う、という内容でなければなりません。
そして選任された特別代理人が未成年者に代わってこの遺産分割協議に捺印をして無事遺産分割が成立ということになります。あとは、この遺産分割協議書を使って必要な手続き(登記申請など)をしていきます。

相続人に未成年者がいる場合に遺産分割協議をする際は、「未成年者は単独で遺産分割協議を行えないので特別代理人を選任する必要がある」という話をしましたが、未成年者が単独で「相続」できないという訳ではありません。未成年者も単独で「相続」はできます。

例えば、先ほどの例で、
「父名義の自宅を法定相続分で母2分の1、子2分の1に名義変更をする」
これであれば、特別代理人の選任は不要です。
仮に、1000万円の預金しかなく、500万、500万ずつ分ける、これもOKです。

今回のまとめ

今回は相続財産の分割方法についてまとめてみました。分割方法はそれぞれの事情や想いによってベストな選択肢が異なります。そのため、ときに専門家を交えながらしっかりと話し合うことが大切です。

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進藤 亜由子 氏

ふくおか司法書士法人 共同代表
1985年、福岡市西区出身。早稲田大学在学中の平成19年度最年少での司法書士試験合格から現在に至るまで司法書士業界一筋。
大手ディベロッパー会社の登記を一手に請け負う東京の司法書士事務所で不動産登記の経験を積み、地元の福岡に戻り、債務整理手続きに特化した司法書士法人で債務整理の経験を積んだ後、独立し伊都司法書士事務所を開設。開業当初より地銀や大手ハウスメーカーからの指定を受け多くの登記手続きを受任。更に債務整理事務所勤務の経験も活かし借金に悩む多くの方の借金問題を解決へと導く。
その後、ふくおか司法書士法人を立ち上げる。他の事務所で断られた複雑な案件を解決し続け、その実績をコラムで紹介。記事を見て全国から相談者が集まる。現在は、相続・遺言手続きセンター福岡支部を運営。事務所内に相続に特化した専門チームを作り、相続に強い司法書士として日々多くの相談に応じている。

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