相続不動産でモメない・失敗しないために知っておきたいポイントとは?「司法書士・進藤 亜由子先生のトラブル回避ガイド」

掲載日:2023年04月24日 カテゴリー:資産相続

相続でもめるのは現金よりも不動産!?知っておきたいポイント

相続財産の分け方には大きく以下の3つがあります。
① 現 物 分 割
② 換 価 分 割
③ 代 償 分 割
遺産分割協議を行う際の基本となりますので、これから相続される方には是非知っておいて頂きたい内容です。
今回は、この3つそれぞれの内容やメリットデメリットをご紹介します。

①現物分割とは?

①現物分割とは?

現 物 分 割 の 事 例

「相続財産:不動産(評価額3,000万円)、宝石(評価額1,000万円)、相続人:兄と弟の2人」
両親の生前から兄が同居しており、相続した不動産については兄が住み続けたいと考えています。
なので、今回は以下のように分け合うことにしました。

・不動産は兄がもらう(評価額3,000万円)
・宝石は弟がもらう(評価額1,000万円)

これを「現物分割」と言います。
不動産や宝石等を売却や共有をせずに、これはこの人、これはこの人と現物をそのままの状態で分け合っていく方法です。
では、現物分割のメリットやデメリットをみていきます。

メリット

1. 分かりやすい
事例を見ていただいてお分かりかと思いますが、分け方が明確で非常に分かりやすいです。

2. 手っ取り早い
換価分割と異なり売却手続きも必要ないですし、代償分割と違い対象物の評価額を出す必要もないので、相続人同士が分割方法に納得してさえいれば手続き期間は短く済ませることができます。

デメリット

1. 不公平になりやすい
この事例をみていただくと分かりやすいのですが、
兄:不動産(評価額3,000万円) / 弟:宝石(評価額1,000万円)と、金額的に不公平感あります。
不動産と宝石というわかりやすい違いがなくとも、不動産と不動産、宝石と宝石、など対象物が同じであっても、評価額が同じということは滅多にないので公平に分けたい場合には適さない方法です。

②換価分割とは?

②換価分割とは?

換 価 分 割 の 事 例

「相続財産:不動産(3,000万円)のみ、相続人:兄と弟の2人」
兄も弟もそれぞれ別で自宅を購入しており、相続した不動産については不要と考えています。
なので、今回は以下のような方法をとることにしました。

・不動産を売却して現金化する(評価額3,000万円)
・現金を兄と弟で分け合う

これを「換価分割」と言います。
では、換価分割のメリットやデメリットをみていきます。

メリット

1. 現金化で平等な分割が可能
換価分割では現金化して現金を分け合うので、相続人間の取り分が平等であることが一目瞭然というメリットがあります。先に紹介した現物分割は、それぞれが相続する物の価値が違い、相続人間で不信感や不公平感が生まれるというデメリットがありました。
この点、現金を分け合うので相続人間での不公平が生まれません。もちろん、売れた金額を兄が7割、弟が3割を相続するなど相続人間の協議で受け取る財産の額に差をつけることは自由です。

2. 相続手続きとまとめて不動産の処分ができる
換価分割では相続人には不必要な不動産の処分を相続手続きと一緒に済ませられるというメリットもあります。

3. 支払い能力を気にしなくていい
不動産を現金化して、手元にある現金を分け合うので、相続人の中に「現金がない」という方がいても気にせず分割手続きを進められます。
これは、後にご紹介する代償分割との比較でメリットとして挙げられます。代償分割は支払い能力がない相続人がいると、分割が困難になってしまうケースがあるのです。

デメリット

1. 手間と時間と費用がかかる
例えば、不動産を処分して現金化するには、相続人でその話をつけて、相続登記をして、売却先を探して、売買の登記をする必要があります。そのため手続きが長期化する可能性があります。

2. 譲渡所得税がかかる
換価分割は対象物を売却してその売却代金を得る行為なので、売却益が出た場合には譲渡所得税がかかります。その際は、被相続人の取得費を引き継ぐことが出来ますので被相続人が購入したときの契約書がないか、探してみて下さい。

③代償分割とは?

③代償分割とは?

代 償 分 割 の 事例

「相続財産:不動産(3,000万円)のみ、相続人:兄と弟の2人」
両親の生前から兄が同居しており、相続した不動産については兄が住み続けたいと考えています。
なので、今回は以下のような方法をとることにしました。

・不動産は兄がもらう(評価額3,000万円)
・現金を兄から弟に支払う(1,500万円)

これを「代償分割」と言います。
兄が不動産を全部もらう代償として、不動産の評価額の半分の金額を弟に現金で支払います。

メリット

1. 遺産をそのまま残せる
例えば、今回の事例だと不動産をそのまま残して住み続けたり、活用したりできます。

2. ある程度公平性が保てる
現物分割のように、不動産は兄、宝石は弟などと分けるよりも公平性を保てる分割方法です。

3. 協議後に不動産を売却した場合、居住用財産の3,000万円特別控除を受けることができる。
今回の事例のように居住していた兄が対象不動産を相続し、後に不動産を売却したら居住用財産の3,000万円特別控除を受けることが出来ます。3000万円の控除はとても大きいので、大きなメリットといえます。
仮に、換価分割で兄が1,500万円、弟が1,500万円を相続した場合、兄は控除を受けることができますが弟は控除を受けることが出来ません。よって、相続した不動産に一部の相続人が居住しており、売却の予定があるのであれば、換価分割より代償分割を行った方が税務面で有利となります。

デメリット

1. 兄に支払い能力がない場合
事例で「兄が弟に1,500万円を現金で支払う」としていますが、例えば兄が1,500万円を支払えなかった場合、債務不履行を理由に遺産分割協議を解除してやりなおすことは基本的にはできません。なので、この代償分割を検討する場合は、兄に十分な資力があるかのか?ということをしっかりと考えなければいけません。

2. 不動産の評価方法で揉める可能性
今回、弟がいくらもらえるのか?は兄が取得する不動産の評価がいくらなのか?ということに直結します。
評価が高ければ高いほど沢山もらえますよね。一般的に、不動産の評価額は「固定資産評価額 < 相続評価額 < 市場価格」と言われていますが、相続財産の分配をする際にどの評価を使うかということは法定されていないので、相続人間で揉める原因となりやすいです。基本的には市場価格が採用されますが、引き続き不動産に居住する前提で売る予定がない場合には、相続人間の協議で相続税評価額や固定資産税評価額を使う場合が多いです。

今回のまとめ

今回は相続財産の分割方法についてまとめてみました。分割方法はそれぞれの事情や想いによってベストな選択肢が異なります。そのため、ときに専門家を交えながらしっかりと話し合うことが大切です。

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進藤 亜由子 氏

ふくおか司法書士法人 共同代表
1985年、福岡市西区出身。早稲田大学在学中の平成19年度最年少での司法書士試験合格から現在に至るまで司法書士業界一筋。
大手ディベロッパー会社の登記を一手に請け負う東京の司法書士事務所で不動産登記の経験を積み、地元の福岡に戻り、債務整理手続きに特化した司法書士法人で債務整理の経験を積んだ後、独立し伊都司法書士事務所を開設。開業当初より地銀や大手ハウスメーカーからの指定を受け多くの登記手続きを受任。更に債務整理事務所勤務の経験も活かし借金に悩む多くの方の借金問題を解決へと導く。
その後、ふくおか司法書士法人を立ち上げる。他の事務所で断られた複雑な案件を解決し続け、その実績をコラムで紹介。記事を見て全国から相談者が集まる。現在は、相続・遺言手続きセンター福岡支部を運営。事務所内に相続に特化した専門チームを作り、相続に強い司法書士として日々多くの相談に応じている。

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