亡くなった順番で変わる「代襲相続」について知っておきたいポイントを解説

掲載日:2024年01月30日 カテゴリー:資産相続

亡くなった順番で変わる相続

最近、ドキドキしてますか?なんとなく「刺激が欲しいな」って思うときに私が手に取るのがミステリー小説です。
ミステリーと言えば殺人事件。更に、よく取り上げられるテーマが「遺産争い故の殺人」です。

この場合に動機となるのが「自分の取り分を増やしたい」です。被害者が亡くなることで得する人物が容疑者になります。

そこで、登場する探偵やら警察が・・・
「いや、太郎さん(夫)が先に亡くなっているから、奥さん(花子)が正一さん(義父)を殺害する動機にはなりませんよ!」
みたいな台詞を口にすることがあります。
この台詞、結構さらっと流れていったりするのですが「先に亡くなってるから殺害動機にならない」・・・ん??
これって一体どういうことなのでしょうか。

妻は亡くなった順番によって相続財産をもらえるかどうか際どい立場になることも!?

妻は亡くなった順番によって相続財産をもらえるかどうか際どい立場になることも!?
ミステリー小説では、殆どの場合複数人が死亡します。
そしてこの死亡する順番によって、妻は相続財産がもらえるかどうか際どい立場になることが割とよくあります。
何故かというと、こういうことなんです。

【例】
正一は莫大な財産を遺して何者かに殺害されました。子は太郎と次郎で、太郎には妻の花子がいます。
一般的にはこの状況だと、太郎と次郎が1/2ずつ財産を相続します。

ところが、この太郎も死亡している場合はどうでしょうか。
太郎がもらうはずだった1/2の財産は一体誰のものになるのでしょうか。

『代襲相続』の適用!?

『代襲相続』の適用!?
ここで先程の探偵の台詞をおさらいします。
「いや、太郎さん(夫)が先に亡くなっているから、奥さん(花子)が正一さん(義父)を殺害する動機にはなりませんよ!」

この探偵は何が言いたいかというと・・・太郎が正一より先に亡くなってる場合は奥さん(花子)は正一の財産を相続できないから
奥さん(花子)は正一を殺してもメリットないよね = 正一を殺害する動機はないよね。ってことです。

何故かというと、先に相続人である太郎が亡くなっている場合『代襲相続』という相続制度が適用されるからです。

『代襲相続』が適用されると妻はどうなる?

『代襲相続』が適用されると妻はどうなる?
『代襲相続』とは、被相続人(正一)が亡くなったとき既に相続人(太郎)が亡くなっていたというパターンです。
この『代襲相続』が発生している場合に相続人になれるのは・・・

 ① 死亡した相続人(太郎)の子や孫
 ② 兄弟姉妹が相続人の場合、被相続人より先に亡くなった兄弟姉妹の子

②は今回のケースに該当しないので置いておいて、①の場合に注目してみます。
正一より先に太郎が亡くなっている場合『代襲相続』が発生しますが、妻である花子は太郎の子ではないので相続人となることができません。
なので、正一の財産は全て次郎が相続することになります。

一般的に考えると、この状況で花子が正一を殺害するメリットはありません。
なので、太郎が先に亡くなっている場合、花子が正一を殺害する動機はないから犯人である可能性は極めて低いという台詞が飛び出すのです。

『数次相続』とは??

『数次相続』とは??
因みにこれが逆だと、花子は一気に第一候補躍り出ることになります。
正一➡太郎の順で亡くなると、太郎が相続するはずだった正一の財産は花子のものになるからです。

これを『数次相続』と言います。

まあ、因みにの因みにですが、花子が犯人の場合は欠格事由に該当するのでどっちにしてもばれたら相続財産は1円ももらえません。

相続実務でもまず確認するのが亡くなった順番

令和6年4月1日からスタートする相続登記義務化を間近に控え、ずっとそのままにしていた相続登記にそろそケリを付けようか、という依頼が増えています。その依頼には、被相続人が数世代前で、法定相続人が既に亡くなっていることが多々あります。
その場合、面談時に必ず聞くのが「亡くなった順番は?」です。
先述したように亡くなった順番で相続人が変わるので、手続きに必要となる書類も変わります。
「亡くなった順番で相続できるか、できないかが変わる」これって結構、重大事項ですよね。

この説明を読んで、私は相続人になれるの?と疑問に思った方は相続の専門家にご相談下さい。
亡くなった順番を一人一人聞いて、専門家が相続人を特定します。

Written by..

進藤 亜由子 氏

ふくおか司法書士法人 共同代表
1985年、福岡市西区出身。早稲田大学在学中の平成19年度最年少での司法書士試験合格から現在に至るまで司法書士業界一筋。
大手ディベロッパー会社の登記を一手に請け負う東京の司法書士事務所で不動産登記の経験を積み、地元の福岡に戻り、債務整理手続きに特化した司法書士法人で債務整理の経験を積んだ後、独立し伊都司法書士事務所を開設。開業当初より地銀や大手ハウスメーカーからの指定を受け多くの登記手続きを受任。更に債務整理事務所勤務の経験も活かし借金に悩む多くの方の借金問題を解決へと導く。
その後、ふくおか司法書士法人を立ち上げる。他の事務所で断られた複雑な案件を解決し続け、その実績をコラムで紹介。記事を見て全国から相談者が集まる。現在は、相続・遺言手続きセンター福岡支部を運営。事務所内に相続に特化した専門チームを作り、相続に強い司法書士として日々多くの相談に応じている。

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