「抵当権付き不動産」を相続したら?売却までの流れとポイントを解説

掲載日:2024年02月27日 カテゴリー:資産相続

『抵当権付き不動産』の相続から売却までの流れ

殆どの方が身近に感じているであろう『実家どうする問題』。
「実家は近くにありますか?」「実家は近くにありますか?」「いま実家に住んでいますか?」
「もし実家を相続することになったらどうしますか?」「今住んでいる家を離れて実家に戻ることを選択しますか?」「それとも売却しますか?」

この『実家どうする問題』、私も他人事ではありません。
結果的に、「実家は相続したけれど住むことは難しいから売却をする」という選択をされる方も多いかと思います。
今回は最近よくご相談いただく『抵当権付き不動産』を相続した場合の売却までに必要な手続きについてまとめました。

『抵当権付き不動産』を売却するまでに必要な登記手続き

抵当権付き不動産を売却するには次のような登記申請をします。

1.相続登記 ➡ 2.抵当権抹消登記 ➡ 3.売買の登記

1.相続登記
 不動産を売却する前にまずは相続登記をして所有者を相続人名義にしなければいけません。
 この相続登記は相続人の人数や協力度合い、被相続人の転籍の回数など様々な要因により想定より時間がかかってしまった、ということは
 割とよくあります。売買日付を近い日付で決めてしまって「相続登記が間に合わない!どうしよう・・・」といったことにならないように、
 ある程度相続登記の目途がたったところで売買の日付を決められることをお勧めします。

2.抵当権抹消登記
 次に、不動産についている抵当権を抹消しなければいけません。なぜ売却前に抵当権の抹消が必要かというと、
 抵当権がついているということは「この不動産は借金の担保にとられていますよ」という状態になっているからです。
 担保に取られているということは「仮に支払えなくなったら、この不動産を売って売った金額から借金を返済してもらいます」ということです。
 なので、抵当権がついている不動産を売買する際は、抵当権を抹消してから所有権移転をするという流れになります。

不動産に抵当権がついている仕組み

毎日色んな不動産の登記を確認しますが、抵当権がついている不動産は少なくありません。
なぜ不動産に抵当権がついているかというと、その多くは住宅ローンが関係しています。一般的にマイホームを購入しようと思ったら
数千万円の資金が必要です。この数千万円を一括で払える人はほとんどいないでしょう。なので、殆どの場合が家を買うときに住宅ローンを
組んでお金を借ります。
そしてその住宅ローンの担保として、購入したマイホームに抵当権をつけるのです。よって、住宅ローンを完済するまでの30年程の期間は、
抵当権がついている状態になります。また、住宅ローンを完済(借金を全部返し終わる)しても抵当権は自動的に消えてくれません。
自身で抵当権抹消登記を管轄の法務局に申請する必要があります。
完済して抵当権抹消書類は受け取ったけど、いつかしようと後回しにしてそのままになっているという人も多く、
住宅ローンは残っていないけど抵当権だけ残っているという不動産は結構あります。
では、この抵当権を消すためにはどんな手続きが必要なのでしょうか?

抵当権抹消登記の手続き

抵当権を抹消する手続きは、「完済している」か、「完済していない(まだ債務が残っている)」かによって必要な手続きが変わってきます。
「完済している」かどうかの確認は、融資を受けた金融機関に直接電話をする方法が一般的です。金融機関によって若干対応は異なりますが、
相続人であることを証明する戸籍などを提出して電話や郵送で教えてもらえることが多いです。

「完済している場合」

【完済して書類が自宅にある場合】
 債務を完済すると基本的には、金融機関から抵当権を抹消するための書類が郵送されます。
 その書類がご自宅に保管されている場合は金融機関への連絡などは不要です。
 かなり以前のものであっても基本的には使えます。そのまま司法書士に書類を渡してお任せすれば問題ありません。
 必要な書類は以下のとおりです。

 ・抵当権解除証書(弁済証書)
 ・委任状
 ・登記済証(登記識別情報)


【完済しているが書類を発行してもらっていない場合】
 この場合は金融機関に連絡をして、抵当権抹消に必要な書類を発行してもらえれば、あとは【完済して書類が自宅にある場合】と同様に
 抵当権抹消登記が可能です。

【既に完済しているが抵当権抹消のための書類を紛失した場合】
 金融機関に問い合わせをしたときにこんなことを言われる場合があります。「完済しており、既に抵当権抹消書類は発行済です」
 その場合、既に発行されているはずの書類が手元にないので、解除証書や委任状を再発行してもらわなければいけません。
 さらにこの場合はこの世に一つしかない抵当権の権利証も紛失していることになるので、権利証提出に代わる手続きをするため債権者の
 印鑑証明書や実印での押印が必要になり、再発行に少し時間がかかることがあります。売却までのスケジューリングの際は注意が必要です。



「完済していない場合」

 完済していない場合にまず確認しておきたいのが被相続人が加入していた「団体信用生命保険(団信)」です。
 団信とは、住宅ローン返済中に債務者が死亡した場合、保険金によってローン残高が支払われる保険です。住宅ローンを組む場合、
 基本的には団信加入が条件となります。しかし、死亡した年齢によっては保険期間が切れている場合もあるので、保険金請求が可能か否かの
 確認をされて下さい。
 そして債務も残ってるし団信も使えなかった、という場合には完済するための資金をどうするか?によって手続きが異なります。

【現金で完済する場合】
 ローンの残額も少ないから現金で支払ってしまおうという場合は金融機関にその旨を連絡すると同時に【完済しているが書類を発行して
 もらっていない場合】と同様に抵当権を抹消するために必要な書類を取り寄せます。

【売却代金で残りの住宅ローンを返済する場合】
 相続人が不動産を売却した代金で残りの住宅ローンを返済するという方法です。
 この場合、金融機関に事前に完済日(=売買日)を知らせ、完済の手続きを行っておき、売買日当日に「買主⇒相続人⇒債権者」と
 お金が動き、抵当権抹消と売買を同時に申請します。事前の段取りが重要になります。



私たちににお任せください

ここまで読まれて「え?なんか面倒くさそうだな・・・できるかな・・・」って思われましたよね!?
でも、大丈夫です!!

そんな時は不動産に関する専門家にご相談下さい。
相続に強い不動産の専門家であれば、相続手続きから不動産の売却まで一連の手続きをお任せすることが可能です。
『実家どうする問題』。少しでも解決の糸口になれたら幸いです。

Written by..

進藤 亜由子 氏

ふくおか司法書士法人 共同代表
1985年、福岡市西区出身。早稲田大学在学中の平成19年度最年少での司法書士試験合格から現在に至るまで司法書士業界一筋。
大手ディベロッパー会社の登記を一手に請け負う東京の司法書士事務所で不動産登記の経験を積み、地元の福岡に戻り、債務整理手続きに特化した司法書士法人で債務整理の経験を積んだ後、独立し伊都司法書士事務所を開設。開業当初より地銀や大手ハウスメーカーからの指定を受け多くの登記手続きを受任。更に債務整理事務所勤務の経験も活かし借金に悩む多くの方の借金問題を解決へと導く。
その後、ふくおか司法書士法人を立ち上げる。他の事務所で断られた複雑な案件を解決し続け、その実績をコラムで紹介。記事を見て全国から相談者が集まる。現在は、相続・遺言手続きセンター福岡支部を運営。事務所内に相続に特化した専門チームを作り、相続に強い司法書士として日々多くの相談に応じている。

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