相続登記義務化に突入。まとまっていない遺産分割協議・・・どうしたらいい?

掲載日:2024年04月10日 カテゴリー:資産相続

相続登記義務化に突入。でも、遺産分割協議がまとまっていない・・・どうしたらいい?

「とうとう4月から相続登記義務化されちゃったよ・・・でも親戚のおじさん、まだ納得してない。どうしたらいいの!?」
という方もいらっしゃるのではないかと思います。
義務化には罰則がつきものです。相続登記の義務化ももちろん義務を果たさなければ罰則があります。
『自分はやる気満々なのに、納得してない人がいて相続登記ができない・・・自分も罰則の対象になるの?そんなの酷い。』
と嘆いている方、ご安心ください。そんな方のために救済手段があります。それは、『相続人申告登記』です。

『相続人申告登記』とは、「私がこの不動産の所有者の相続人です!」と法務局に申出(申告)しておくことで罰則などを回避できる制度のことです。
何故そんな申出をする必要があるの?どんな人が利用するの?など見ていきます。

『相続人申告登記』どんな人が利用する?

相続人申告登記を利用する主な理由としては、『何らかの事情があってすぐに相続登記をすることができない』です。
『何らかの事情』とは例えばこんな事情でしょうか。

・相続人が多すぎて調査や書類集めに時間がかかる
・納得してない相続人がいて話し合いがまとまらない

ただ、どんな事情であれ、義務化される以上は全く無視を決め込むことは得策ではありません。
義務を果たさないと10万円以下の過料の対象になってしまうからです。
でも本格的に相続登記をしようと思ったら、相続人の調査や書類集め、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)など、
やらなければならないことが山積みです。「やる気はあるけど、すぐには申請できない・・・」こんな場合に相続人申告登記をしておくことで、
一先ず10万円以下の過料という罰則を回避することができます。

『相続人申告登記』をするにはどんな手続きが必要??

必要な書類や手続きなどは、通常の相続登記と比較すると必要書類はかなり簡易化されています。
▼必要書類
・申出をする相続人自身が被相続人(不動産の所有者)の相続人であることを証明する戸籍謄本など

ちなみに、通常の相続登記をする場合はざっとこんな書類が必要になります。
比較すると、必要書類がかなり省略されているのが一目瞭然ですよね。
▼必要書類
・被相続人の出生から死亡まで繋がる戸籍謄本など
・被相続人の戸籍の附票
・遺産分割をした場合は分割協議書と印鑑証明書
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・不動産を取得する相続人の住民票

申告出来る人は?いつまでに申告が必要??

▼申告できる人
・被相続人(不動産の所有者)の相続人

相続人が複数いる場合でも単独で申出することができます。注意点としては、申出をして登記簿に氏名住所が記載された相続人のみが
義務を履行したものとみなされるため、申出していない相続人については引き続き罰則の対象となるようです。
通常の相続登記も相続人の1人から申請することは可能ですが、法定相続(相続人同士で話し合いをせずに法律で定められた割合で相続をする)か
遺産分割協議で相続人全員の話し合いがまとまっていることが前提です。

▼いつまでに申告が必要?
どちらか遅い日から3年以内に相続人申告登記が必要です。
・2024年4月1日
・自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日

相続登記の履行期間と同じですね。

登録免許税は??

相続人申告登記に登録免許税はかかりません。
相続登記は原則として不動産価額の1000分の4を掛けた額の登録免許税がかかります。

では無事に相続人申告登記が終わったとします。
「簡単に相続人申告登記できてよかったわー。これで安心。もう何もせんでいいわー。」というわけにはいかないので注意が必要です。

『相続人申告登記』後の遺産分割協議

続人申告登記はあくまでも一時しのぎの便法だということを忘れてはいけません。
相続人申告登記後に遺産分割協議が成立した場合には、正式な相続登記の申請が必要です。正式な相続登記は、遺産分割協議成立日から
3年以内に申請が必要なのでご注意ください。遺産分割協議が成立しない場合は特に登記申請が義務付けられることはありません。

では相続人申告登記から遺産分割協議成立後の相続登記まで一通りの流れが分かったところで、
「話し合いがまとまりそうにないし、罰則が怖いから今すぐにでも相続人申告登記をしておこう!」と思われた方、ちょっと待って下さい!
それは得策ではないかもしれません。

焦って『相続人申告登記』しようとしてる方、ちょっと待った!

先にも説明しましたが、相続人申告登記をしてもその後遺産分割協議が成立するとその成立日から3年以内に相続登記の申請が必要です。
ということはつまり、2回申請が必要になります。

 ① 相続人申告登記
 ② 相続登記

簡易化されて登録免許税がかからないとはいえ、可能であれば申請は1回で終わらせたいですよね。
なので、遺産分割協議が履行期間内(相続開始又は2024年4月1日の遅い日から3年以内)にまとまりそうであれば、相続人申告登記をせずに
履行期間内に通常通りの相続登記だけやってしまえばいいんです。

きちんと専門家に依頼すれば、揉めて調停などになったとしも遺産分割協議書に3年以上かかるということは稀なケースだと思うので、
慌てて相続人申告登記をする必要はないのです。そこの判断も含めてぜひ登記の専門家にご相談下さい。

Written by..

進藤 亜由子 氏

ふくおか司法書士法人 共同代表
1985年、福岡市西区出身。早稲田大学在学中の平成19年度最年少での司法書士試験合格から現在に至るまで司法書士業界一筋。
大手ディベロッパー会社の登記を一手に請け負う東京の司法書士事務所で不動産登記の経験を積み、地元の福岡に戻り、債務整理手続きに特化した司法書士法人で債務整理の経験を積んだ後、独立し伊都司法書士事務所を開設。開業当初より地銀や大手ハウスメーカーからの指定を受け多くの登記手続きを受任。更に債務整理事務所勤務の経験も活かし借金に悩む多くの方の借金問題を解決へと導く。
その後、ふくおか司法書士法人を立ち上げる。他の事務所で断られた複雑な案件を解決し続け、その実績をコラムで紹介。記事を見て全国から相談者が集まる。現在は、相続・遺言手続きセンター福岡支部を運営。事務所内に相続に特化した専門チームを作り、相続に強い司法書士として日々多くの相談に応じている。

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